日本代表に立ちはだかる「W杯16強の壁」 02年&10年大会で喫した“惜敗”の教訓とは?

二度目のラウンド16進出を果たした2010年大会は、パラグアイにPK戦の末惜しくも敗れた【写真:Getty Images】
二度目のラウンド16進出を果たした2010年大会は、パラグアイにPK戦の末惜しくも敗れた【写真:Getty Images】

ベルギーとの歴然とした戦力差が“勝機”を生み出すか

 2010年南アフリカ大会で、日本は二度目のラウンド16進出を果たしパラグアイと対戦。ともに初のベスト8を懸けた一戦となった。

 岡田武史監督が率いる日本は、大会直前の戦術変更が功を奏し2勝1敗でグループリーグを突破するが、低めのライン設定からのカウンターを生命線としたため、とりわけ両翼の松井大輔、大久保嘉人には攻守に大きな負担がかかった。

 また、全4試合を同じスタメンで戦ったため、疲労は目に見えて蓄積していた。日本も松井のミドルシュートがクロスバーを叩き、中央でフリーの本田圭佑が狙うシーンもあり、120分間を無失点に抑えている。しかし、ボールポゼッション41.1%で守備に汗を流す時間が長くなり、勝ち切るまでのパワーは生まれず。試合は0-0のまま決着がつかず、PKスコア3-5で敗れた。

 一方、3度目のラウンド16進出となる今回は、FIFAランクに象徴されるように日本劣勢の評価は歴然としている(日本:61位、ベルギー:3位)。世界でも屈指のタレントを揃えたベルギーは、少なからずブラジルが勝ち上がってくると見られる次の準々決勝をすでに見据えている。これは日本にとって悪いことではない。

 また過去二度のラウンド16に挑戦したチームと比べても、日本は最も特性を活かした戦い方ができる。ひたすら耐えるだけではなく、相手を守備に回して驚かせることも可能で、そういう時間が増えるほど省エネで勝ちたいベルギーには焦燥が広がる。

 過去二度、日本には互角に近い勝算があった。しかし、そこには互いの距離を詰めたハイテンポのゲーム支配というシナリオはなかった。またグループリーグ3戦目に主力を温存というギャンブルもなかった。ベルギーは自信満々でキックオフを迎える。ただし日本も相手を十分にリスペクトしながらも、近年の対戦経験からもやり難さは感じていないはずである。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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