日本の“時間稼ぎ”への世界的な批判を生んだ、「サッカー先進国」の色眼鏡
「サッカー先進国」が時間稼ぎのボール回しをしていたら…
しかし、これが母国だったらアディショナルタイム3分をボール回しに使い切ったことを、きっと「クレバーなフットボール」と高く評価したことだろう。ブラジルなら「芸術的」とさえ称賛したかもしれない。たぶん彼らの主観には、「サッカー先進国の自負」という色眼鏡がかかっているに違いない。
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そしてお隣の韓国からも、やはり批判的な意見が出た。2連敗で意気消沈していたのが、ドイツ戦の勝利で「自国礼賛・日本敵視」の図式が復活し、「醜く勝つよりも美しく負けた方がいい」という論調で日本を批判した。いつもの韓国の「余計なお世話」である。
ロシアW杯前に行われたトークショーで、元日本代表監督の岡田武史氏は「日本人はクライフが好き。醜く勝つよりも美しく負けた方がいいというのは日本人の美学だが、勝った人は絶対に言わない」といった趣旨の発言をしていた。
かつてU-19日本代表は、2008年から14年にかけてAFC U-19選手権でベスト8の壁をなかなか突破できず、U-20W杯出場を逃し続けた。当時のチーム関係者が口を揃えて言ったのは、「内容的には日本がいいサッカーをしていた。どの試合も相手を圧倒していた」ということだった。裏返せば、相手は日本の長所も短所も熟知していたのかもしれない。
そうした負の連鎖を16年のU-19日本代表が優勝という形で打ち破った。そして今回のポーランド戦、形こそ違うがW杯で一つの結果を出した。次はベスト16の壁を突破することだ。
ちなみに、日本対ポーランド戦の終盤のボール回しに、地元ロシアやポーランドのファン・サポーターからブーイングされたのは理解できる。しかし日本人サポーターからもブーイングが出たそうだ。もしかしたら、W杯初観戦のビギナーだったのかもしれない。
(六川亨 / Toru Rokukawa)
六川 亨
1957年、東京都生まれ。月刊サッカーダイジェストの記者を振り出しに、隔週、週刊サッカーダイジェストの編集長を歴任。01年に退社後はCALCIO2002、プレミアシップマガジン、サッカーズ、浦和レッズマガジンなどを創刊して編集長を務めた。その傍らフリーの記者としても活動し、W杯や五輪などを取材しつつ、「サッカー戦術ルネッサンス」(アスペクト社)、「ストライカー特別講座」、「7人の外国人監督と191のメッセージ」(いずれも東邦出版)などを刊行。W杯はロシア大会を含め7回取材。現在は雑誌やウェブなど様々な媒体に寄稿している。