なでしこ佐々木の神算鬼謀 レジェンド澤を決勝米国戦に温存成功

佐々木監督「澤を使うつもりだった」

 佐々木監督の頭の中には、もう1つのプランがあった。それは、延長戦を見越して、一度投入に傾いたレジェンド澤穂希(INAC)というジョーカーの起用を我慢したことだ。
 「ラスト3分の手前のところでは澤選手をボランチに投入しようと思っていたのですが…  切り替えて延長から使おうと思っていました。選手が足をつることもあるので、もう1枚のカードはキープしようと思っていました。そのときは勝負に出るなら菅澤、守るなら川村というのは頭にありました」
 試合後、胸に秘めたプランを明かした。タッチラインの外でウォーミングアップを続けていた澤を終盤クローザーとして投入することを決意したが、作戦を変更した。90分で勝負を決められれば理想的だが、延長戦でチームの精神的支柱である澤を投入することで120分の勝負を盤石に進めようという腹積もりだった。
 動きたい場面で我慢を続けた結果、劇的なオウンゴールが生まれた。投入を見送った澤はアメリカ決勝戦に向けて体力を温存できる形になった。
 ラウンド16のオランダ戦からから中3日での戦いが続いていた。準々決勝と準決勝を戦ったエドモントンは真夏の暑さだった。準々決勝オーストラリア戦は気温35度の酷暑。この日は24度と穏やかだったが、雲間から太陽が出ると灼熱の日差しが降り注いだ。
 日程面の不利もある。なでしこは前日準決勝でドイツを下したアメリカより、5日(日本時間6日)の決勝戦まで1日休養日が少ないハンデがある。指揮官が「思ったよりも疲労があった」というなでしこにとって、フレッシュな状態の澤が控えていることは何よりも心強い。
 アメリカと戦うワールドカップの決勝と言えば、前回のドイツ大会の延長後半に劇的な同点ゴールを決めた姿が今でも印象に残る。アメリカリーグでプレーした時代には「クイック・サワ」の異名で恐れられた。コンディションを万全に整えたなでしこの背番号「10」が、再びアメリカにとっての脅威となる。スピルバーグ佐々木監督が描くシナリオの最終章には、勝負所で輝く「澤」の名前が記されてるはずだ。
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