西野監督が“他力”に賭けざるを得なかった事情 ポーランド戦後半に見えた日本の失速ぶり
後半に入って明らかに落ちた運動量
深めからの攻撃が続くポーランドはロングボールでエースのレバンドフスキを走らせるが、W杯デビューとなった槙野智章が中央では吉田麻也、ワイドでは長友や酒井宏樹と上手く挟み込んで自由にさせなかった。互いにセカンドボールやロングボールを起点に何度かチャンスはあったものの、明らかにペース配分していたポーランドを走行距離で平均1キロ近く上回った差は、後半に入って徐々に表れてくる。
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前線で鋭い動き出しを見せていた岡崎慎司が、後半開始早々にピッチに座り込み大迫勇也と交代する。日本は時間を追うごとに間延びが目立つようになり、ポーランドは前半よりシンプルに遠目のクロスやロングボールを使って、セカンドボールからゴールを狙ってきた。そして後半14分には山口蛍との接触で得た30mのFKからクルザワが左足でボールを蹴ると、酒井宏樹を押し出しながら酒井高徳と大迫の間を抜けたベドナレクが右足で捉えてゴールに突き刺した。
日本は明らかな疲労感の中でも、交代出場の乾貴士がカットインからシュートを放つなど攻めに出るが、逆にポーランドのカウンターにあってギリギリの対応を強いられる。日本にとって大きなピンチは後半29分、自陣でボールをカットしたポーランドが、クリホビアクからパスを受けたジエリンスキが右サイドに展開。長友の外側で受けたグロシツキがクロスを放つと、レバンドフスキが飛び込んで合わせるが大きく枠を外れた。形としては完璧にやられただけに、日本にとっては幸運だった。
そして、他会場で行われていたセネガル対コロンビアの後半29分、DFジェリー・ミナの得点でコロンビアがリードする。このままいけば日本は今大会から採用されたフェアプレーポイントの差でセネガルを上回り、2位で決勝トーナメントに進出できる。
日本は後半37分、FW武藤を下げてキャプテンのMF長谷部誠を投入することで方向性をピッチで共有し、自陣でのボール回しを続ける。会場からは大きなブーイングが起き、アディショナルタイムを待たずに席を立つ人も多く出てくるが、ポーランドの選手たちもボールを取りにこなくなり、0-1のまま試合を終えることに。他会場もそのままコロンビアが勝利し、日本は2大会ぶりの決勝トーナメント進出を決めた。
河治良幸
かわじ・よしゆき/東京都出身。「エル・ゴラッソ」創刊に携わり、日本代表を担当。著書は「サッカーの見方が180度変わる データ進化論」(ソル・メディア)など。NHK「ミラクルボディー」の「スペイン代表 世界最強の“天才脳”」を監修。タグマのウェブマガジン「サッカーの羅針盤」を運営。国内外で取材を続けながら、プレー分析を軸にサッカーの潮流を見守る。