なでしこ劇勝! 奇跡のオウンゴールで2大会連続決勝進出

圧倒的な勝負強さ 今大会全6試合連続で1点差勝利

 なでしこジャパンは1日(日本時間2日)、エドモントンで行われた女子W杯カナダ大会準決勝イングランド戦で2-1勝利を飾った。
 これまで日本にとって4戦2敗2分けと相性の悪いイングランド戦。佐々木則夫監督は1次リーグ3試合で登録23選手を全員起用したが、決勝トーナメントに入ってから3試合連続で同じスタメンを起用。定番の4-4-2システムでメンバーを固めてきた。オーストラリア戦で決勝点を挙げたジョーカーFW岩渕(バイエルン・ミュンヘン)や、クローザーとして存在感を放つ澤(INAC)をベンチに残した。この日も、左足骨折で離脱したFW安藤(フランクフルト)の7番のユニフォームを着せた白クマのぬいぐるみを岩渕が抱きかかえて入場。なでしこの武器である一体感を示しつつ4強の大一番に臨んだ。
 一方、開催国のカナダを破って4強進出したライオネス(雌ライオン)の愛称で知られるイングランドは4-3-3システムでスタート。カナダ戦で目を負傷して途中交代したGKバーズリーもスタメン出場した。アメリカが待つ決勝戦への進出を懸けた激闘はコモンウェルススタジアムでスタートした。
 開始直後の1分、なでしこにヒヤリとする瞬間が訪れた。FWテイラーが抜け出して放った強烈な右足シュートがゴールを襲ったが、わずかに枠を外れた。立ち上がりは互いにボールが落ち着かずに進み、個々の突破力を生かすイングランドペースの展開になった。
 10分過ぎくらいからは日本が持ち前の技術と連動性を武器にボール支配率を高めた。イングランドは日本のダブルボランチにマーカーを付けてビルドアップを防ぎに掛かったが、日本は熊谷(リヨン)と岩清水(日テレ)の両センターバックがドリブルで持ち運んでリズムを作る。イングランドは日本の左サイドバックの鮫島(INAC)の裏を狙う攻撃を多く仕掛けてきたが、連携の取れた守備で封じ込めた。アタッキングゾーンまでボールをつないでいくシーンが増えたなでしこだが、ラストパスやクロスの精度を欠いて決定的な場面を作り出すには至らない。
 日本に先制のチャンスが訪れたのは33分。オーバーラップした有吉(日テレ)へ岩清水が一気のロングパスを通すと、イングランドDFがたまらずエリア内で押し倒して、なでしこにPKが与えられた。これをキャプテンの宮間(岡山湯郷)が冷静にゴール左へ決めた。ベンチメンバーの下へ駆け寄って喜びを分かち合った。イングランドのお株を奪うようなシンプルな攻撃でなでしこが1-0のリードを奪った。
 しかし41分、コーナーキックのこぼれ球を拾ったホートンに対する大儀見(ヴォルフスブルク)の守備がファウルと判定され、イングランドにPKが与えられた。ゴール左を狙ったウィリアムズのキックに対して海堀もコースを読んだが、ボールは両手の先を抜けてゴールへ。1-1の同点となった。そして、このまま前半は終了した。
 両チームともメンバー変更はなく、後半がスタート。両チームとも大きなチャンスを作ることができずに時間が流れていく中で、先に動いたのはイングランドだった。同15分テイラーに代えてFWホワイトを送り込むと、試合のペースを一気に握った。同17分、FWダガンのボレーシュートが日本ゴールを襲ったが、クロスバーに弾かれて事なきを得た。続く同19分にも鮫島がボールを奪われたところからホワイトのシュートがゴールを襲ったが、GK海堀(INAC)が懸命にセーブした。21分にはコーナーキックからFWスコットが強烈なヘディングシュートを放ったが、枠を外れた。なでしこにとっては耐える時間帯になった。
 連続したピンチをしのいだ日本・佐々木監督は同25分についに動く。大野に代えて切り札の岩渕を投入し、勝負に出た。その岩渕は同28分、左サイドからカットインしてシュートを放った。同31分には左サイドでポイントになり、宮間のクロスから阪口がヘディングシュートを狙った。ゴールにこそならなかったが、アルゼンチンの伝説的な天才マラドーナからちなんで「マナドーナ」の愛称を持つチーム最年少の背番号「16」が躍動。なでしこが一気にリズムを取り戻した。
 後半ロスタイムは3分。そして、運命の瞬間が迎える。右サイドのカウンターから川澄の大儀見へのラストパスを相手DFがクリア仕切れずに、オウンゴール。これが決勝点となった。
 今大会6試合全てが1得点差勝利。「女性版バルセロナ」と呼ばれる華麗な連動性に加え、圧倒的な勝負強さが輝いている。
 5日(日本時間6日)バンクーバーで行われる決勝の相手は運命のライバル、アメリカ。2011年W杯ドイツ大会決勝ではPK戦の激闘を制し、2012年ロンドン五輪決勝では1ー2で敗れている。なでしこが連覇まであと一歩まで近づいた。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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