4強なでしこの連覇に立ちはだかる大英帝国の誇るジョーカーとは

決勝T2試合で1得点1アシストと調子を上げるイングランドFWテイラー

 7月1日(日本時間2日)に迫った、女子W杯カナダ大会準決勝でなでしこは準々決勝でホスト国カナダを2ー1で撃破したイングランドと対決するが、FIFA公式サイトは「このラウンドのニューカマー」と紹介。イングランドにとって女子W杯準決勝進出はおろか、決勝トーナメントで1勝を挙げることも女子サッカー史上初の快挙だったからだ。
 イングランドの象徴であるライオンにちなみ、ライオネス(雌獅子)の愛称を持つは大会初戦のフランス戦で0-1の黒星スタートになった。その後、メキシコとコロンビアをそれぞれ2-1で下して1次リーグを突破。トーナメントに進出すると、古豪ノルウェーと開催国カナダを、それぞれ2-1で撃破。なでしこの5試合連続1点差勝利が注目されているが、イングランドもまた大会の全試合が1点差の接戦。際どいゲームを制しながら勝ち上がってきた、勝負強さのあるチームだ。
 FIFA公式サイトはイングランドの背番号「19」のFWジョディ・テイラーを注目選手としてピックアップ。「イングランドは長きにわたり、コンスタントにゴールを決めるナンバー9を探してきたが、ついに回答を見つけたのかもしれない」と覚醒のストライカーを高く評価している。テイラーは準々決勝のカナダ戦で、相手DFからボールを奪うとそのままドリブルで持ち込み、右足のシュートで先制点をゲットした。
 試合後のヒロインは「アメイジング」と心境を語ると大粒の涙を流した。テイラーは1986年生まれの29歳。おもにアメリカやオーストラリアでキャリアを積み、現在はアメリカのポートランド・ソーンズでプレー。オーストラリアではリーグ得点王に輝く活躍を見せた。一方で代表デビューは2014年と遅く、キャップ数もまだ11試合。しかし、すでに5ゴールと成長を見せている選手だ。
 英紙「デイリー・エクスプレス」はカナダ戦後の彼女のコメントを紹介している。
 「途中出場が多かったから、カナダ戦の先発出場には驚いた。監督の信頼を感じてモチベーションが上がったわ。60分くらいで交代すると思っていたけど、監督は私をピッチに残した。それはカナダのディフェンスにプレッシャーを掛けるためだと思ったから、とにかく走って走って走り続けたの。試合が終わったときには、死ぬかと思うほど疲れたわ」
 1次リーグは最終戦コロンビア戦に出場。決勝トーナメント初戦のノルウェー戦(2-1勝利)はスーパーサブで1アシストを記録すると、カナダ戦では初ゴール。大英帝国の危険なジョーカーと化している。
 マーク・サンプソン監督も「ジョディはワールドクラスのストライカーだ。彼女がピッチに戻ってきてくれて嬉しい」と語る。大会前に膝の手術をしたという苦労人だが、今やイングランドの攻撃の切り札になっている。
 テイラーは「先発にこだわりはない」と言う。そして、なでしことの一戦に対して「日本は偉大なチーム。でも、私たちは自信を持って臨まなければいけない。彼女たちとプレーできることに興奮しているわ。私たちは1試合ごとに強くなってきた。それが、優勝できるって気持ちにさせてくれているの」と、大いにモチベーションを高めている。
 日本は今大会5試合すべて1点差で勝利する一方、イングランドも5試合すべて1点差だが、4-1負け。僅差が続いている両軍だけに、準決勝も大きく点差が離れる展開になることは考えづらい。先発か、スーパーサブか。いずれにしても好調のテイラーには警戒が必要だ。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

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