ピクシーも惚れ抜いた才能 なでしこ熊谷が4強イングランド撃破誓う

相手1トップを岩清水とのセンターバックコンビで抑え込む

 今大会のイングランドは、開催国のカナダとベスト8で対戦。55000人近い観客が地元チームを後押しする、超アウェー状態を乗り越えてきたタフなチームだ。その印象は「速い選手が多いし、キック力、パワーはあるので、ちょっとオーストラリアに似たところはあるのかなというイメージ」だと熊谷はいう。そして、ゲームのポイントになるのは相手の1トップをいかに抑えるかだと、センターバックの目線でゲームを展望した。
 「(イングランドは)ワントップが頑張ってキープして、上がりを待って攻撃してくるというイメージなので、そこをいかに潰せるかというところが重要になってきます。あとはしっかりラインコントロールして、ワントップとの駆け引きをうまくできたら、楽に前でプレーできるかなと思う。イワシ(岩清水)さんと声を掛けながら一人チャレンジ、一人カバーというのを徹底していけば、絶対やられないと思う」
 決勝トーナメントに入ってからの2戦とも、センターFWがいる相手を抑え込んできた熊谷は自信を見せた。それも踏まえ、「やり方をそこまで大きく変える必要はありません。特にオーストラリア戦は前から蹴らせない守備ができていたので、それを続けながら、後ろは前が追ってくれて限定された所に対して、しっかり負けないで勝負する事ができれば問題ない」と、負けたら終わりのトーナメント勝ち抜いてきた流れを生かす心積もりだ。
 「ここまで来たら目の前の敵を倒すしかないので、試合を楽しみながら自分にできることを全力でやっていきたい」
 そう、力強く語った熊谷。24歳はなでしこの中では若手の部類に入るが、20歳で迎えた前回ドイツ大会でもレギュラーとして活躍し、決勝のPK戦では優勝を決定づけるキックを決めた。その後、フランクフルト(ドイツ)、リヨン(フランス)と欧州トップレベルのクラブで日々を過ごすことで得てきた経験値はチームでもトップクラス。2012年のロンドン五輪でも銀メダル獲得に貢献した。
 この活躍に当時J1名古屋の監督を務めていたドラガン・ストイコビッチ氏は「ナンバーワンプレーヤーは熊谷だ。契約書にサインしてほしいくらい。とにかくクレバーな選手」と絶賛していた。現役時代にピクシー(妖精)の異名を取ったファンタジスタのチームにはDF田中マルクス闘莉王、現神戸DF増川隆洋という日本屈指のストッパーが存在したが、女性ながら素晴らしいプレーを見せた熊谷に惚れ抜いていた。
 妖精も認める才能がイングランドの前に大きな壁として立ちはだかり、なでしこを2大会連続の決勝へ導く力となる。

【了】

サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web

ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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