青赤魂を胸に 首都エースのMUTO、「青」と「赤」への新たな挑戦

「青赤」の誇り

 FC東京での最後の試合は、必要以上の徹底マークに苛まれた。決定的なシュートチャンスが訪れぬまま迎えた後半15分、スルーパスを受けた武藤はボックス付近で4人の相手DFに囲まれてしまう。しかし、エースはシュート が厳しいと判断すると、ギリギリまで相手守備陣を引きつけ、絶妙なタイミングで横にパスを出す。フリーでボールを受けたFW前田遼一が左足で流し込み、勝ち越しゴールを演出した。
 この日2得点の前田はヒーローインタビューで、若きエースに対し「今まで一緒にプレーできて幸せだった」と、その表情に笑顔を灯し、はなむけの言葉を贈った。
 これまでゴールという結果でチームをけん引してきた。しかし、最後はアシストという、チームメートにゴールを託す形で幕を下ろした。
 それでも武藤は「やっぱりゴールが一番ほしかった」と、ラストマッチでの唯一の心残りを語った。悔しさを浮かべた、その表情は立派なエースストライカーの顔だった。
「1年半、あっという間だった。だが、 この1年半があったから、今の自分がある」
 ドイツへと旅立つ若者のラストダンスを見届けた観客総数は41363人。改革が叫ばれるJリーグを、デビューしてたった1年半の青年が十分すぎるほどに湧かせてきた
 その試合翌日、武藤は再び、笑顔で味スタにいた。クラブ主催のファンイベントに参加後、こう言葉にした。
「FC東京の1年半は宝物。あっという間だった。想像以上の結果と、環境の変化があった。これに満足することなく、一歩一歩人間的にも選手としても、成長して、後輩の目指すべき選手になりたい。FC東京でやっていたプレーがドイツでも通用するんだということを証明したい」
 武藤は青赤を脱いでも、「青」と「赤」のユニホームでさらなる飛躍を誓う。日本代表ユニホ ームは「青」。そして、今夏から加入するマインツのチームカラーも「赤」だ。「東京のサポーターは世界一。皆さんへの感謝や、恩は、代表やドイツで活躍して返していきたい」。誇り高き「青赤」の魂を胸に、「MUTO」は愛する味スタのピッチから欧州へと旅立つ。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images

 

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