なでしこ佐々木監督が本家“スピルバーグ”級の名采配 後半投入の岩渕が決勝弾

根気強いなでしこジャパンのサッカーが実を結んだと思います。よく頑張りました」

 ハリウッドの名監督「スピルバーグ」を自認する手腕は水際立った。気温35度を超える灼熱のエドモントンで迎えた女子W杯準々決勝オーストラリア戦で、なでしこジャパンの佐々木則夫監督の一手が勝負を決めた。
 決勝トーナメント初戦と同じメンバーで相手を圧倒し、ボール支配率は60パーセントを維持。数多くの決定機を作りながらもゴールを奪えない状況で、ハーフタイムには「焦ることなく、じっくり90分でもしくは120分かかっても、君たちのサッカーなら絶対に行けるから自信を持って!」と指揮官はロッカールームでチームを鼓舞した。
 それでも、こう着状態の続いた後半27分に監督は動いた。FW大野忍(INAC)に代え、FW岩渕真奈(バイエルン・ミュンヘン)を投入。この交代がピタリと的中した。絶妙なトラップと創造性あふれる仕掛けでチャンスを作っていた岩渕は、後半42分に大仕事をする。左CKからの波状攻撃で岩渕が見事に決勝点を奪った。
 「あの時間帯の中で岩渕選手はドリブルも効くと思います。初速もある。混戦からでしたけど、しっかり決めていただいてよかったです」
 完璧なまでのクライマックス。脚本通りの展開に試合後、してやったりの表情だった指揮官は岩渕投入の意図をこう説明し、殊勲者を讃えていた。
 「根気強いなでしこジャパンのサッカーが実を結んだと思います。よく頑張りました、選手たちは」
 今大会は1次リーグから5試合連続で1点差勝利。この日のピッチでも花咲いた連動性あふれるサッカー以外にも、絶大な勝負強さが輝いている。ラウンド16のゲームから中3日の日本に対し、中5日と休養十分のオージー軍団のプレッシングにも「想定内だった。相手のプレッシャーが意外に弱かった。逆に言うと、早く自分たちのサッカーができた」と冷静に振り返っていた。
 これで前回の2011年ドイツ大会に続く、2大会連続の4強進出。そして連覇も見えてきたが、指揮官は目の前だけをしっかりと見据える。
 「継続して次のステップを目指して頑張るだけです。目の前の相手をしっかり止めて、何とか前に皆さんと共に行きたいと思います」
 逞しさを湛えるなでしこが再び頂点へ。一歩一歩着実に足を進めている。
【了】
サッカーマガジンゾーンウェブ編集部●文 text by Soccer Magazine ZONE web
ゲッティイメージズ●写真 photo by Getty Images
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