原口元気は「笑わない」 夢のW杯で闘う男の美学「サッカーがつらいのは当たり前」
鬼気迫る原口の表情に見えた強固な意志
コロンビア戦。日本は試合開始早々の3分に、相手MFカルロス・サンチェスが得点機会阻止のハンドを犯して退場処分となり数的優位を得るも、相手に圧迫される状況が続いた。そんななか、原口はカットインから相手ゴールを強襲する術に長けるイスキエルドには酒井宏とふたりで対応して挟み込み、後方からオーバーラップしてくるモヒカには執拗なチャージで対抗。また攻撃面では近接するボランチ・柴崎との連係でハーフスペースにポジションを取って酒井宏の前進経路を創出する動きも見せ、文字通りに攻守両面で積極的な関与を果たした。
この試合で我を見せる必要など微塵もない。勝利のために邁進するのみ。鬼気迫る原口の表情には、その強固な意志が映し出されていた。
試合終了後、ピッチに突っ伏した後、顔を上げた原口は柔和な笑顔を浮かべていた。全力を尽くして結果を得られた者だけが味わえる充実感に包まれた彼は、「日本のために勝ちたいという気持ちだけで、それだけです。はい」と言って再び微笑んだ後に、こうも言っている。
「まだ1勝なので、まずはこのグループリーグを突破できるように、また最善の準備をして頑張りたいと思います」
コロンビアから勝利を挙げても、日本代表には苦難の日々が待ち受けている。セネガル、ポーランドとの試合如何によっては、まだグループリーグ敗退の可能性もある。また、もし決勝トーナメントに進出できたとしても、これまで味わったことのないプレッシャーに苛まれるなかで強敵と向き合わねばならない。だが原口は、その環境や立場を自ら願い続けていた。
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。