W杯1巡目で優勝候補が苦戦した理由 「ビルドアップ」の向上と「撤退守備」の強化
ブラジルはネイマールのコンディション次第か
スペインは左サイドを中心に狭い地域で執拗にパスをつないで突破へ持っていくコンビネーションが図抜けていた。ボールサイドに人が集中するので、奪われてもそのまま封鎖ができる。ポルトガルには何度かカウンターを食らっていたものの、コケを後方に残しているぶん、「センターバック+ブスケッツ」だった以前よりも相手のカウンターへの耐性はありそうだ。
ブラジルもマルセロ、コウチーニョ、ネイマールの左のトライアングルが強力。カウンターの威力も強烈で、攻めても守っても強く総合力は随一だろう。ただ、ネイマールは本調子でないのか、ボールロストがあまりにも多く、スイス戦に関してはブレーキになっていた。ネイマールのコンディションに左右されそうだ。
とはいえ、まだ1周回っただけ。ここから初戦を踏まえて強豪国は修正をかけてくるはず。グループリーグと決勝トーナメントで流れが変わるのは、W杯ではいつものことだ。撤退守備とロングカウンターに秀でたチームが有利というのは、あくまで1周目での傾向である。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。