【歴代W杯初戦の教訓】日本“最強世代”が散った「ラスト6分の悲劇」 豪州の圧力に屈する

8分間で3失点、残酷なまでの明暗

 残り12分、中盤を厚くしてボールを回して時間を稼ぐことも考えられたが、小野は積極的に前線のスペースへ飛び出し2点目を狙いに動いた。暑さで疲労が蓄積するなかで攻撃に厚みを出そうとすれば、全体が間延びしてカウンターのリスクが増す。試合は終盤にかけてオープンな展開になった。

 残り6分、オーストラリアがCK後の混戦からケーヒルが同点弾。その直後に日本も駒野友一が右サイドを抉り切り、ケーヒルのファウルで倒れるが笛は鳴らない。結局後半44分にケーヒル、アディショナルタイム2分にもアロイージのゴールが決まり、両チームの明暗は残酷に色分けされた。

 初戦を逆転で落とした日本は1分2敗でドイツを去り、逆に勢いを得てベスト16に進出したオーストラリアは、優勝国イタリアを延長戦まで追い込むのだった。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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