【歴代W杯初戦の教訓】日韓大会で開いた歴史の扉 ベルギーとの“肉弾戦”で得た勝ち点1の意味

ベルギー戦でチーム2得点目を決めた稲本(左)【写真:Getty Images】
ベルギー戦でチーム2得点目を決めた稲本(左)【写真:Getty Images】

闘い続けた鈴木と稲本がゴールを奪う

 だが最前線でアグレッシブに身体を張って闘い続けた鈴木が、小野のロングフィード受け、相手DFに競り勝って右足を一杯に伸ばしてネットを揺らす。さらに敵陣で柳沢敦がインターセプトすると、後方から駆け上がる稲本がそのままの勢いを利してボックスまで侵入し、クリーンシュートで逆転した。

 その後日本はディフェンスラインを押し上げる瞬間に、ペーター・ファン・デル・ヘイデンに入れ替わられて同点弾を許すが、ワールドカップで初めての勝ち点1を手にした。

 日本にとっては“フラットスリー”の中央でプレーしてきた森岡隆三を故障で失い、稲本が奪ったはずの3点目も直前のファウルで取り消され、柳沢への再三のファウルも見逃されるなど後味の悪さが残っても不思議はなかったが、総じて引き分けスタートの受け止め方は前向きだった。

 フィリップ・トルシエ監督は「勝てる可能性もあり、そこはフラストレーションも覚えるが、2-2はロジカルな結果だ」と語り、中田英も「勝つに越したことはないけれど、簡単に勝てないのがワールドカップ。負けなかったことが大切。4年前は3試合で1点だったのに、今回は1試合で2点が取れて、それが成長の証」とコメントしている。

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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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