メジャー大会で相次ぐ敗北 なぜイングランドはPK戦に弱いのか
決勝トーナメントに進出したここ8回のメジャー大会で6回もPK戦負け
僕がイングランドで見た4大会中、2度がPK戦敗退。ユーロも、96年、2004年、2012年でPK敗退。2000年はグループ戦敗退、2008年は欧州予選落ちだから、実質3大会連続PK戦敗退だ。
さかのぼれば90年イタリア大会もPK戦負け。トーナメント・ステージに進出した8回のメジャー大会で、イングランドはなんと6回もPK戦敗退を喫している。
ここまで来れば、これは偶然ではない。その度重なるPK戦敗退の理由は、重圧がかかると、全てを失う負けよりは死力を尽くして守り、引き分けを選ぶイングランドのメンタリティにある。
さらに、イングランドにはまだまだ“PK戦は時の運、くじ引きのようなもの”という意識が強い。
今でもFA杯戦は準々決勝まで引き分け再戦だが、それもPKで勝敗を分けることをある種、軽蔑している英国人の気質が反映されている。だから何度PK戦で負けても、負けと認めない。
しかし、いくら全てを失うのが嫌だといっても、サッカーの試合で“守る”というのは、真っ向から力でぶつかる戦いを好む、イングランド本来のスタイルには合わない。
ラインを上げ、1対1の争いを制し、最前線に人数をかけてゴールを奪う――というのがイングランド・サッカーの真骨頂で、その原点には非常にアグレッシブな攻撃精神がある。
それも、サッカー発祥国で、世界で唯一、サッカーがラグビーと同じスポーツだった記憶がある国の名残りだろう。とにかく激しくボールを奪い合う。肉弾戦を厭わない中盤の戦うプロセスと、ダイレクトにゴールに向うフィニッシュがイングランド・サッカーの特徴だ。
ところが、大きな大会で重圧がかかると、失点したくないという気持ちが大きくなり、そうしたボールを奪う勇気と攻撃性が失われてしまう。