【歴代W杯初戦の教訓】初出場の日本、“本気”のアルゼンチンと「0-1」 惜敗が生んだ想像以上の消耗

1998年フランスW杯アルゼンチン戦の布陣図【画像:Football ZONE web】
1998年フランスW杯アルゼンチン戦の布陣図【画像:Football ZONE web】

上出来な一戦が2試合目のクロアチア戦にかけた重圧

 そういう意味では、2戦目で顔を合わせたクロアチアも似たような姿勢を貫いた。日本戦が行われたナントは酷暑。疲労困憊の中で、むしろ日本に劣勢に立たされる場面もあったが、結局は大会得点王となるダボール・シュケルの決勝点を守り抜いて1-0で日本を破り、最終的には3位の好成績につなげた。

 逆に最初の2試合を死力を尽くして戦った日本は、勝てるはずだったジャマイカにも1-2で競り負けてしまう。後に相馬直樹は吐露した。

「3戦目は身体が重くて、無駄走りが持ち味の自分がこんなことでどうするんだ、と焦りを覚えながら走っていました」

 これではもしグループリーグを突破できていたとしても、その先を戦い抜くパワーが残っているとは思えなかった。

 冷静に振り返れば、1点差で惜敗したアルゼンチン戦は上出来だった。だが最善を尽くして落とした1点差のゲームは、想像以上に心身を消耗させ、2戦目に重圧をかけた。3連敗は、いかにも初陣らしい瑞々しい躓きとも言えた。

(加部 究 / Kiwamu Kabe)



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加部 究

かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。

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