【歴代W杯初戦の教訓】初出場の日本、“本気”のアルゼンチンと「0-1」 惜敗が生んだ想像以上の消耗
1998年フランス大会・グループリーグ第1戦「日本 0-1 アルゼンチン」
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【2002年日韓大会】【2006年ドイツ大会】
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ワールドカップ(W杯)初出場の日本代表を指揮する岡田武史監督は「1勝1敗1分でグループリーグ突破」の目標を掲げた。
代表選手たちは全員がJリーガー。まだ世界の強豪との真剣勝負を体験したことがなかった。最終予選途中まで采配を揮った加茂周監督は、「国内で試合をすれば、ブラジルなど一部を除けば勝てる力をつけていた」と述懐している。
実際に1996年のキリンカップでは、ドラガン・ストイコビッチ、デヤン・サビチェビッチらスーパースターが顔を並べるユーゴスラビアやメキシコに勝利。しかし肝心の選手たちが「相手は本気じゃない」と感じていた。そういう意味でW杯は、初めて掛け値なしに本気の強豪国と戦える機会であり、選手たちは楽しみと怖さを同時に内包していた。
「1勝1敗1分」は、難易度は高くても達成不可能な数字ではなかった。同じグループには、北中米カリブ海予選を3位で通過し同じく初出場のジャマイカがいたし、タレントが豊富なクロアチアには前年のキリンカップで4-3と競り勝っていた。
ただし初戦で顔を合わせるのは、優勝候補のアルゼンチンである。初出場の日本が、ここで躓き精神的なショックを受ければ、2戦目以降に立て直すのは難しくなる。必然的にチームスタッフは、アルゼンチン対策に最も力を入れることになった。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。