試合を壊した「二つの誤算」と「負の連鎖」 城彰二が日本代表に求める“化学反応”
“トップ下”本田を生かす、かつての連動性は失われていた
一方の攻撃面では、2試合連続無得点に終わったことで改めて「決定力不足」という言葉がクローズアップされているが、実際にはゴール前で決めきる力を嘆く以前に、アタッキングサード(相手ゴールまでの残り3分の1のエリア)を崩す策を見出せていない。
元々日本は、世界の強豪国に比べて圧倒的な個の力を持つチームではないため、相手の守備が厳しくなるこのエリアを崩すには、2、3人でのコンビネーションの精度を高めていくことが不可欠だが、スイス戦を見る限りではその部分がまだまだ雑だ。
スイスはW杯欧州予選で、プレーオフの2試合を含めて12試合7失点と堅守を誇るチーム。そんな相手の守備組織を崩すには、それこそ右足に要求したら右足にパスを通すような精度が求められる。そうした部分で多くのミスやズレが生じていたのは、選手個々の技術的なもの以上に、チームとして連携力を高められていないことに尽きると思う。
ただ選手側として難しいのは、西野監督のチームとなってからアタッカー陣のシステム上の配置や、ベストな組み合わせがいまだ定まっていないこと。それが連携力の向上につながっていないのは明らかだ。
例えば、この試合では4-2-3-1が採用され、2列目中央には本田圭佑が入った。本田自身のスイス戦でのパフォーマンスは確かに不甲斐ないものだったが、ボールを足もとに収めてタメを作るシーンはたびたびあった。「攻撃の起点になる」のは、ドリブラータイプではない彼特有の“トップ下像”であり、同じシステムを採用していたアルベルト・ザッケローニ体制の日本代表では、それが攻撃のスイッチとなっていた。本田にボールが入った瞬間に周りの選手が動き出し、ワンタッチでボールをもらうポジションや裏に抜け出して、本田も彼らをシンプルに使うことで自らも生き、連動性が生まれる。
誰を軸に据え、どんなバランスにするかを決めてこそ、攻撃面での連携力は高まるもの。どのタイミングで誰がどのように動き、サポートするのかが見えない以上、世界の強豪国を相手に崩しきれないのは当たり前だ。