国際的な“不信感”を放置する日本サッカー協会 W杯で好結果出ても抜本的改革は不可欠
成功とは呼べない4年間の代表強化と深刻な育成の停滞
今さらながら、もはや日本サッカーはJFAの一部幹部のものではなく、多くの登録者やファンによって支えられている。それを自覚するなら、最大の関心事である日本代表監督の契約解除理由は包み隠さず報せる義務がある。
また一方でJFAには、大事な代表選手たちを守る責務もある。このままでは本田圭佑や香川真司が、ハリル解任の仕掛け人だと思われているのだ。それが真実とかけ離れているなら、せめてW杯の結果が出る前に明確に否定しておく必要がある。
いずれにしても今回の代表監督交代劇では、日常的にあまりサッカーに関心を示さない層のハリルホジッチ氏への同情票も巻き込み、JFAは致命的なイメージダウンを招いた。そして不信感の根幹には、肝心な情報が狭い世界に止まり、人事も含めて透明性を欠く体質がある。いくら即席とはいえ、これで「オールジャパン」と呼ぶには無理があるし、4年ごとの総括も退任した責任者が個別のインタビューで答える前に、しっかりと開示していく姿勢や仕組みが不可欠だ。
もしロシアで好結果が出たとしても、この4年間の代表強化を成功とは呼べない。また代表メンバーを見ても、育成の停滞は深刻だ。今度こそ大会後には、悪戯に代表新監督の発表を急がず、こうした危機的状況を踏まえた上での猛省、さらには抜本的な体制改革へと踏み切るべきである。
(加部 究 / Kiwamu Kabe)
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。