国際的な“不信感”を放置する日本サッカー協会 W杯で好結果出ても抜本的改革は不可欠
解任劇を巡り、ハリルホジッチ氏の主張が“事実”として世界で認識されている現状
炎上したら黙して鎮火を待つ――それがいかに逆効果なのかは、アメリカンフットボールという隣の芝生を見れば、よく分かる。
もちろん、バヒド・ハリルホジッチ前日本代表監督の契約解除問題と、日大の反則タックル問題を同列に語ることはできない。だがタックルをした日大の選手と同様に、ハリルホジッチ氏の主張は国際的にもほぼ事実として報じられ、拡散している。ワールドカップ(W杯)開幕を前に、各国メディアは日本について「監督とベテランの主力選手が反目し、協会は選手の方を支持した」などと紹介しているのだ。
日本サッカー協会(JFA)の田嶋幸三会長は、ハリルホジッチ氏の会見を「それで気が済むなら」と流したが、即座に反論をしなかったために、それを認めたというのが国際的な共通理解となった。当然そういう報道を日々目にする国内のファンも同じような捉え方をするから、現状でJFAは世界的な不信感を放置していることになる。
さすがに今回の代表監督の契約解除については、JFA側に止むに止まれぬ事情があったことは想像に難くない。ところが田嶋会長は決定的な要因を「コミュニケーション不足などの総合的な判断」と濁した。おそらく決裂を避けるための日本的な気遣いと推測するが、ハリル氏側としてはサッカーの本質的な部分で非がないのに、自分では良好なつもりだったコミュニケーションを理由にされ「不当だ」と感じたに違いない。実際にハリル氏自身も「(昨年12月の)韓国戦で大敗したからと言われれば納得した」と語っているわけで、JFAが真意をストレートに告げていれば、こんな事態にはならなかったはずだ。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。