“名将感なき名将”ジダンの華麗なる引き際 レアルを熟知した男の天才的な決断力
解任される前に惜しまれながら去る、絶妙なタイミング
今季のジダン監督は無冠ではなかったが、リーガ・エスパニョーラの優勝争いからは早々に離脱していて、もしCLを獲れなければ去就は微妙だった。クラブ内外に様々な力が働いて、“伏魔殿”のようなところがあるのだ。ある意味、誰からも辞めさせられないで辞めるタイミングは、今しかなかったと言える。
たとえ反ジダン勢力があったとしても、CL3連覇の監督をすぐに辞めさせることはできない。いつか解任される前に、皆に惜しまれながら去る――そのタイミングとしては絶妙だった。
ジダンは「クラブには変化が必要」と辞任の理由を語っている。確かにそうなのだが、全体の流れを読んでタイミングを逃さず行動に移したのはジダンらしい。また、それこそが彼をレアルの名将にした大きな要因だったに違いない。
(西部謙司 / Kenji Nishibe)
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。