“名将感なき名将”ジダンの華麗なる引き際 レアルを熟知した男の天才的な決断力

レアル・マドリードを電撃辞任したジダン監督【写真:Getty Images】
レアル・マドリードを電撃辞任したジダン監督【写真:Getty Images】

前人未到のCL3連覇を置き土産に、突如レアル監督からの辞任を発表

 UEFAチャンピオンズリーグ(CL)3連覇を成し遂げたレアル・マドリードのジネディーヌ・ジダン監督が、突然辞任を発表した。

 2016年1月の就任以来、2シーズン半にわたってレアルを率いて国内リーグ優勝1回、CLは在任中すべて優勝。前身の欧州チャンピオンズカップ時代を含めても3連覇した監督はジダンだけだ。紛れもない名将なのだが、それほど名将感がないのはジダンらしいところかもしれない。

 欧州チャンピオンズカップ創設から5連覇した時のレアルでも、アルフレッド・ディ・ステファノやフェレンツ・プスカシュといったスター選手は有名でも、監督の名前を知っている人は少ないだろう。在任中に二度のCL優勝をもたらしたビセンテ・デル・ボスケ監督も存在感が薄かった。豪華な陣容とは対照的に監督はあまり目立たず、ほとんど何もしていないように見える。その方が、レアルの監督としては上手くいくことが多い。

 スター選手たちを気持ち良くプレーさせれば、大概の試合には勝ててしまう。だから、監督の色は出すぎない方がいい。ジダン監督も基本的にはそういうタイプだった。自分の思うとおりに仕切ろうとすると、このクラブではあまり上手くいかない。戦術的な縛りが強すぎて中心選手から反発されたら、クビが飛ぶのは監督の方である。

 ジダンの前任者だったラファエル・ベニテス監督は実際にそうなっている。ベニテスは経験豊富で実績のある監督だが、レアルには向いていなかった。その点、ジダンはレアル向きだったと言える。

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西部謙司

にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。

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