日本代表は4年経って“振り出し”に戻った W杯メンバー23人に見る迷走ぶりとは?
W杯や五輪の躍進を導いた、中盤でのボール奪取&ショートカウンター
最終ラインをペナルティーエリアのすぐ外に設定して引いて守れば、背後は20メートルしかないので相手のスピードはある程度制御できる。ただし、引いてしまえばミスは自陣で起こりやすい。ガーナ戦では山口蛍と井手口が相手へのアシスト同然のミスパスをしていた。
これまでも日本はこの手のミスを繰り返しているので、ロシアW杯をノーミスで過ごせるとは思えない。さらにパワフルな相手FWをゴール前へ引き込んでしまうのも危険である。日本にはロングカウンター向きのスピード、パワーを持ったアタッカーもいない。
ポゼッションが高まったところで攻めあぐむだろうし、ハイプレスを外されればカウンターにさらされる。引いてしまえば攻撃ができず、相手のパワーにやられる危険も増す。そうなるとプレーの主戦場を、中盤に持ってくるしか選択肢がないのだ。
最終ラインを押し上げ、自陣ゴールから30メートルはぎりぎりで相手のスピードを制御できる距離。ボール奪取地点は中盤になるので、そこからのカウンターは距離が短くなり、日本のアタッカーのスプリント能力を生かしやすい。ロングカウンターでは途中で体をぶつけられてパワーで潰されやすいが、ショートカウンターならば当てられる前にすり抜けられるし、ファウルされても相手ゴール近くでFKを奪える。
過去の世界大会で日本が好成績を収めている戦い方でもある。2002年日韓W杯、10年南アフリカW杯、12年ロンドン五輪がそうだった。日本のブロック守備はさほど強固ではないのだが、見た目は組織的でスライドも早いので、相手は攻め込みを躊躇する。南アフリカW杯とロンドン五輪では短期間でモノにしているので、ロシアでも形にすることは可能だろう。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。