広島MF青山敏弘、3年ぶりの代表サプライズ選出 苦悩から這い上がった“再生”の舞台裏
「過去に戻ろうとしたのではなく、もう一度生まれ変わろうとしていた」
今季開幕前のタイキャンプに入った時、チームを見極めていた城福浩監督は、それまで決めていなかった主将人事を発表した。キャプテンマークは引き続き、青山に渡された。
「昨年の苦しさをバネにして、その悔しさを晴らしたいという強い思いを感じた。だからこそ、選手としてもうワンランク、レベルを上げてほしい。サッカーを、そして自分自身を発見してほしい」
1月29日、青山をキャプテンに指名した指揮官は、そんな期待感を言葉にした。そしてその言葉は、現実となる。
池田誠剛フィジカルコーチとの二人三脚で肉体改造に取り組み、それまでチェーンのようにつながっていなかった全身の構成要素が一つずつ、噛み合い始めた。肉体の機能性について考えもしなかった青山にとって、池田コーチの指導は驚きそのもの。足の幅、足首を捻る角度、歩幅。「サイドブレーキをかけながら走っている」とコーチが指摘していたフォームも微調整されていく。
「こんなに走れるようになるんだ。自分の身体じゃないみたいだ」
第3節の鹿島アントラーズ戦(1-0)後、ドレッシングルームで深い感慨にとらわれた。ただ、肉体が動き始めた時、普通は「これで前のようなプレーができる」と感じがちになるもの。だが青山の考え方は違った、と城福監督は言う。
「(青山は)自分自身が勝ち取った栄光ある過去に戻ろうとしたのではなく、もう一度生まれ変わろうとしていた。新たな自分を勝ち取ろうとしていた」
1月29日に指揮官がキャプテンマークを手渡した時に込めた思いを、青山は戦術的に実践しようとしたのである。
その戦術的成長とは何か――。それは、自分自身が中心になってボールを受けないといけないという呪縛から解放されたことにある。