長谷部誠が手にした「ドイツ二冠目」の価値 アンカーとして示したW杯への確信
盛大な優勝セレモニーで長谷部がスーツを着ていた理由
長谷部自身にとってはドイツへ渡った2季目の2008-09シーズン、ヴォルフスブルク在籍時代にマイスターシャーレ(リーグタイトル)を獲得して以来、2度目のタイトル獲得となる。約10年の歳月を経て知った「ポカール」の重みも、彼の心を高揚させているだろう。
ロシア・ワールドカップ(W杯)前の壮行試合ガーナ代表戦に臨む日本代表27人のメンバー入りを果たすなかで、この3週間はやるせなく、悔恨の思いに囚われていたかもしれない。しかし試合に出場できないなかでも厳しいトレーニングを欠かさず、自らに信頼を寄せてくれる指揮官からチャンスを与えられ、その期待に応えられた。長く患っていた膝の問題もすでに解消し、ようやく彼は自身3度目となるW杯の舞台で戦える自信を備えられた。
優勝から一夜が明けても、興奮の余韻が残るフランクフルト。街の中心部にあるレーマー広場には数十万人の市民が押し寄せて、盛大な優勝セレモニーが行われた。チームメイトがリラックスしたジャージ姿でビール瓶を片手にサポーター・ファンと歓喜に酔いしれるなか、長谷部はスーツを着込み、少しだけはにかんでその輪に加わっていた。正装の理由は、宴の直後に空港へ向かって再び挑戦の場へ赴くため――。
長谷部誠は、ロシアへの道のりを辿るために、母国へと帰還する。
(島崎英純/Hidezumi Shimazaki)
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。