長谷部誠が手にした「ドイツ二冠目」の価値 アンカーとして示したW杯への確信

アンカー起用に応えてバイエルンのパスを寸断

 決勝の相手はフランクフルトを率いるニコ・コバチ監督が、来季から指揮を執るバイエルン・ミュンヘン。バイエルンはUEFAチャンピオンズリーグ(CL)準決勝でレアル・マドリードに敗れてヨーロッパタイトルを逸しており、リーグに続いてポカールも制して国内二冠を達成し、今季限りで勇退するユップ・ハインケス監督に盛大な花道を作って送り出すモチベーションがあった。

 一方のフランクフルトは、長谷部が退場したヘルタ戦からリーグ最終節まで1勝3敗。一時はCL出場圏内の4位も視野に入れていたが、コバチ監督がバイエルンの指揮官に就任するニュースが流れた時期を境に急失速し、UEFAヨーロッパリーグ(EL)出場権をも逃す8位でフィニッシュしていた。ただ、ポカールを制すればEL出場権が得られるとあって、チームの中心選手であるケビン=プリンス・ボアテングは「僕たちのターゲットはポカールのタイトルだけ」と公言してもいた。

 迎えたベルリン・オリンピアシュタディオンでのポカール決勝。長谷部は約3週間も実戦から離れていたにもかかわらず先発に復帰し、このチームにとって欠かせない戦力であることを示した。

 ポジションはリベロではなく、最終ライン前に位置するアンカー。彼の役割はバイエルンの組織を分断しつつ、自チームをつなぎとめること。「アンカー」とは、元々船舶を水上の一定箇所に留めておくために鎖などで海底、川底などに沈める道具である「錨(いかり)」のことを指す。長谷部は文字通りその働きを全うし、ハメス・ロドリゲス、チアゴ・アルカンタラ、ハビ・マルティネスらの前に立ち、ロベルト・レバンドフスキ、トーマス・ミュラー、フランク・リベリーへのパス供給を許さなかった。

島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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