ハリル解任で「チャンスが巡ってきた」 夢のW杯へ、武藤嘉紀が刻んだ“8得点”の価値
欧州三大リーグでプレーする日本人選手で最多得点
今季のブンデスリーガでの得点数は8。これはマインツでチーム内得点王となる数字であり、ヨーロッパ三大リーグ(リーガ・エスパニョーラ、プレミアリーグ、ブンデスリーガ)でプレーする日本人選手のなかでもトップの数字である。
「このリーグで得点する難しさというのは、海外でやっている人は分かると思います。それでも、この得点数には納得していない。二桁以上取っていたら自信を持って言いますけど、8点だけじゃ納得できない。そこは貪欲にならないとFWじゃないですよね」
ドイツ・ブンデスリーガには、各国代表でレギュラーを張るセンターバックが数多くいる。もちろん、そのなかには今夏のロシア・ワールドカップ(W杯)に出場する代表選手もいる。歴戦の猛者が居並ぶなかで刻んだ数字は、本人が思っている以上に価値あるものだ。
だからこそ、今季最終盤の武藤は、あえて二兎を追う戦いに出た。一つはマインツを1部に残留させること。そしてもう一つは、待望して止まない日本代表入りを果たして、ロシアで日本のために戦うことである。
5月5日のブンデスリーガ第33節、ドルトムントのホームであるジグナル・イドゥナ・パルクで、武藤の得点嗅覚が表出した。1点リードの前半13分、MFパブロ・デ・ブラシスのクロスを頭で合わせてゴールゲット。わずかにボールに触って軌道を変える、ゴールへの渇望が詰まった秀逸なゴールだった。結局これが決勝点となり、マインツはリーグ戦1試合を残して1部残留を決めた。
島崎英純
1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。