ELにこそ“夢がある”!? 「中途半端な欧州王者」を決める大会の意味とは?
ELには独自の味わいがあるのも事実
最も権威があるのはリーグチャンピオンが集まるC1だが、C2とC3のどちらが上かというと微妙だった。いちおうカップウィナーのほうが格式は上なのだろうが、実力的にはC3という見方もできる。C3優勝チームにはレアル・マドリード(スペイン)、バイエルン・ミュンヘン(ドイツ)、ユベントス(イタリア)、リバプール(イングランド)などビッグクラブが名を連ねている。
大きな変化が起きたのはチャンピオンズカップがCLとなり、やがてチャンピオンだけでなく上位クラブにも出場権が与えられてからだ。実質的にUEFAカップの強豪クラブがCLに吸収されてしまったので、クオリティーが一気に落ちてしまいCL一人勝ちの状況になってしまった。1999-00シーズンからカップウィナーズカップを吸収する形で統合。そして2009-10シーズンからはELとして再出発している。
CLベスト16を逃した各グループの3位チームがELに途中参戦する方式になり、大会のグレードは上がった。今季で言えばアトレチコやドルトムント(ドイツ)がCLからの参入組である。
ただ、余計になんの大会なのかよく分からなくなっている。明らかにCLの2軍的な扱いであり、ただ興行目的でやっているとしか思えない。しかし、ELには独自の味わいがあるのもまた事実だ。
かつてはチャンピオンズカップでさえ、レッドスター・ベオグラード(セルビア)やノッティンガム・フォレスト(イングランド)など、今ではCL優勝どころか参入すらしていないチームが優勝しており、スウェーデンのマルメ、ベルギーのクラブ・ブルージュも決勝へ進んだことがある。現在のCLは一部のビッグクラブしか優勝していない。CLは洗練され、レベルアップもしたが、あまり夢のない大会になっている。
西部謙司
にしべ・けんじ/1962年生まれ、東京都出身。サッカー専門誌の編集記者を経て、2002年からフリーランスとして活動。1995年から98年までパリに在住し、欧州サッカーを中心に取材した。戦術分析に定評があり、『サッカー日本代表戦術アナライズ』(カンゼン)、『戦術リストランテ』(ソル・メディア)など著書多数。またJリーグでは長年ジェフユナイテッド千葉を追っており、ウェブマガジン『犬の生活SUPER』(https://www.targma.jp/nishibemag/)を配信している。