Jリーグで顕在化する“ハリル効果” 川崎の支配力を揺るがす激しさと直線的な攻撃
ホームで連敗の川崎 浦和とFC東京が貫いた直線的にゴールを目指す動き
バヒド・ハリルホジッチ前日本代表監督は去ったが、Jリーグではハリル効果が顕著だ。
目に見えて球際の攻防が激しくなり、直線的にゴールを目指す傾向が強まった。象徴的なのが、開幕から新監督を迎えて上位を占めるサンフレッチェ広島やFC東京である。
首位を快走する広島の城福浩監督は言う。
「最初に守備の構築から入った。今後は守備の質を下げずに、攻撃のトレーニングに入っていく。もちろん守備のトレーニングも、いかに前から奪えるかがポイントで、引いて守ろうとしているわけではありません」
昨年までなら、リーグ内で川崎フロンターレのポゼッションは群を抜いていた。対戦相手は、テンポ良くボールを回され、どうしても集中力と体力を維持し切れずに失点を重ねた。
だが5月の声を聞き、いきなりその川崎がホームで連敗した。オズワルド・オリヴェイラ新監督を迎えた浦和レッズも、今年から長谷川健太監督が指揮を執るFC東京も、厳しい守備でボールを奪取すると迷わず直線的にゴールを目指した。
5月2日の第12節で対戦した浦和は前半を1-0とリードすると、後半5分、右サイドから鮮やかなカウンターを仕掛け、長澤和輝→橋岡大樹→アンドリュー・ナバウトとつないで興梠慎三がフィニッシュ。その3分後には、柏木陽介のロングパスから再び興梠が決定機を迎えると、今度は同25分、ディフェンスラインの背後に落としたボールにナバウトが飛び出すと、GKチョン・ソンリョンに倒され一発退場。2点を追う川崎にとっては致命傷となった。
加部 究
かべ・きわむ/1958年生まれ。大学卒業後、スポーツ新聞社に勤めるが86年メキシコW杯を観戦するために3年で退社。その後フリーランスのスポーツライターに転身し、W杯は7回現地取材した。育成年代にも造詣が深く、多くの指導者と親交が深い。指導者、選手ら約150人にロングインタビューを実施。長男は元Jリーガーの加部未蘭。最近選手主体のボトムアップ方式で部活に取り組む堀越高校サッカー部のノンフィクション『毎日の部活が高校生活一番の宝物』(竹書房)を上梓。『日本サッカー戦記~青銅の時代から新世紀へ』『サッカー通訳戦記』『それでも「美談」になる高校サッカーの非常識』(いずれもカンゼン)、『大和魂のモダンサッカー』『サッカー移民』(ともに双葉社)、『祝祭』(小学館文庫)など著書多数。