伊藤達哉とハンブルガー“残留神話”を支えるもの 主将が送る「満足するな」の言葉

20歳の日本人FW伊藤達哉【写真:Getty Images】
20歳の日本人FW伊藤達哉【写真:Getty Images】

【欧州蹴球探訪|第4回】ヴォルフスブルクとの“崖っぷち対決”で、伊藤が2ゴールに絡む活躍

 今季もハンブルガーSVは厳しい残留争いを強いられている。ただ、このクラブは絶体絶命の正念場で凄まじい力を発揮する。ドイツ・ブンデスリーガが創設されてから54年間、一度もトップリーグから降格を喫したことのない唯一のクラブ――その神通力の源を知りたくて、現地時間27日に行われた残留争いの眼前の敵・15位ヴォルフスブルクとのアウェーゲームを観に向かった。

 ハンブルガーに救世主はいない。そこに居たのは、ひたむきにプレーする選手たちと、驕り高ぶることなく未来を見据える者、そして若者を厳しく叱咤して成長を促す者の姿だった。

 ベルント・ホラーバッハ前監督から出場機会を与えられずにU-21チームでのプレーを強いられていた20歳の日本人FW伊藤達哉は、そのU-21チームを指揮していたクリスティアン・ティッツ監督がホラーバッハ監督の解任を受けて新指揮官に就任すると、再びトップチームへと引き上げられた。

 主に左右の両サイドでプレーする彼のストロングポイントは、1対1での局面打開だ。味方からパスを受けて相手と対峙し、一瞬のスピードで抜き去る。トラップ能力に優れるから、逆サイドから放たれた味方のフィードパスをワンタッチでコントロールして、その流れのままに相手との距離を離してしまう。

 だからといって、彼は相手とのフィジカルコンタクトを避けているわけでもない。もちろん身長163センチ、体重59キロの身体をそのまま屈強な相手DFに晒せば分が悪くなる。そこで伊藤はトップスピードで抜き去り、追走して自らの体をプッシュしてくる相手の力を利用してそれを前進の糧とする。柔道の精神にも似た力点の捉え方は見事で、そのクイックネスな動作も相まって、相手はなす術なく伊藤の挙動を見送る。

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島崎英純

1970年生まれ。2001年7月から06年7月までサッカー専門誌『週刊サッカーダイジェスト』編集部に勤務し、5年間、浦和レッズ担当を務めた。06年8月よりフリーライターとして活動を開始。著書に『浦和再生』(講談社)。また、浦和OBの福田正博氏とともにウェブマガジン『浦研プラス』(http://www.targma.jp/urakenplus/)を配信しており、浦和レッズ関連の情報や動画、選手コラムなどを日々更新している。2018年3月より、ドイツに拠点を移してヨーロッパ・サッカーシーンの取材を中心に活動。

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